もちあずき

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会社の近くにちゃんとした食事を取れる店がない

 何しろ都会というのは妙なところで、それというのも人間が多すぎるのがすべての原因である。

 

 人間というのはその人口密度に比例して妙なことを始めるもので、例えば無人島に一人で流れ着いたような人間ならば、火を起こしたり住居を作ったりするだけで満足しているが、それが二人、三人となってくるとだんだんやることが回りくどくなってくる。すなわち物のやり取りにつかう抽象的な価値交換媒体を生み出したり人間関係という概念を規定したりしはじめる。二人、三人でこうなのだから、東京のように一千万人以上が住む場所となるとその奇々怪々さも極まってくる。

 

 これが東京に人間が生存する上でまったく必要ではないものを売る店ばかりができる理由である。コールドプレスジュースだの、アボカド専門カフェだの、天然酵母パン屋などが雨後の筍のようにどこからか生え出てくる。

 

 私たちに必要なのは米のおいしい定食屋であり、一杯が八百円以下で食べられるカレー屋であり、アートなしでよいのでちゃんと飲むことができるコーヒー屋である。これらが会社の近くに可及的速やかに建造されないかぎり基本的人権が尊重されているとは言い難い。