【コラム】スシを作ってみよう
よく知られている通り、スシは二十三億年前に惑星ナドンで作られたのが始まりである。最近は太陽という星の近くの惑星でも似たものが出来ているようだが、何しろ二十三億年程年季が足りないし、だいたい作っているのが未開の地の原始人なので、たいていの宇宙スシガイドからは無視されている。
スシは実に魅力的なものであると言える。しかしながら、高価であることは否めない。そこで、今回は、スシを自分で作る方法を紹介しよう。
一、まず材料を用意する。知っての通り、スシはシャリ、ワサビ、ネタで構成されている。コメ、ワサビ、それに魚を用意しよう。なお、魚というのは水生生物のうち足が無く食用に適したものを指す。レグルス星の住民はその九割が水中で生活しているが、彼らをスシの材料にしようとすると、おそらくあなたがハンバーグの材料になるはずだ。
二、シャリをつくる。コメを水から茹で、茹で上がったら酢を混ぜる。このとき、水は真水を使うことがコツだ。ベクルックス星出身の編集員がこの記事のためにコメを茹でたとき、ベクルックス星特産の高硫化水素濃度水を使ったため、本記事は私が担当することになった。この場を利用して彼の一日も早い回復と手順書を注意深く読む能力の獲得を祈らせてもらいたい。
三、ネタを用意する。魚を下ろし、切り身にする。大きさは好き次第だ。ただし衛星よりは小さいほうがいいし、砂粒よりは大きい方がいい。
四、握る。シャリの上にワサビをのせ、その上にネタを乗せればいい。
これでスシの出来上がりだ。うまく握れていれば、スシはたちまち電子エネルギーが離散化し、この上なく美しく輝くはずだ。玄関に飾るもよし、イルミネーションにするもよし。もしうまくいかなくても大丈夫。スシはすべて食べられる材料で出来ているため、そのまま食べても案外いけるのだ。騙されたと思って試してみてほしい。これぞ、自分でつくるスシの楽しみとも言える。
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冬の札幌に初めて行く人へたった一つ伝えたいこと
路面が雪や凍結ですべるので靴にすべり止めをつけようとかいう話
あれは嘘です
必要ないです
札幌に四年住みましたが周囲の人は皆普通に靴屋で買った靴で歩いていました
必要なのは路面に対して足を垂直に下ろすことだけです
あとは雪が積もってるところのほうが滑りにくいからそこを目指して足を置けばよいかもしれない
でもその下の路面がつるつるになってたり変なものが隠れてたりすることもあるから注意だ
とはいえ三十分も歩けば感覚はつかめると思います
あとなるべく地下道を歩けば大丈夫
たった一つ、すべり止めは必要ない それだけ覚えてください
会社の近くにちゃんとした食事を取れる店がない
何しろ都会というのは妙なところで、それというのも人間が多すぎるのがすべての原因である。
人間というのはその人口密度に比例して妙なことを始めるもので、例えば無人島に一人で流れ着いたような人間ならば、火を起こしたり住居を作ったりするだけで満足しているが、それが二人、三人となってくるとだんだんやることが回りくどくなってくる。すなわち物のやり取りにつかう抽象的な価値交換媒体を生み出したり人間関係という概念を規定したりしはじめる。二人、三人でこうなのだから、東京のように一千万人以上が住む場所となるとその奇々怪々さも極まってくる。
これが東京に人間が生存する上でまったく必要ではないものを売る店ばかりができる理由である。コールドプレスジュースだの、アボカド専門カフェだの、天然酵母パン屋などが雨後の筍のようにどこからか生え出てくる。
私たちに必要なのは米のおいしい定食屋であり、一杯が八百円以下で食べられるカレー屋であり、アートなしでよいのでちゃんと飲むことができるコーヒー屋である。これらが会社の近くに可及的速やかに建造されないかぎり基本的人権が尊重されているとは言い難い。
高い城の男(Amazonビデオ)シーズン1感想
はじめに
Amazonビデオの高い城の男 シーズン1を見終えたので感想です
ビデオ版・原作ともにネタバレありで、また酒とかチキンとかケーキとか食べながらだらだら見たので勘違いしている部分などあるかもしれません ご了承ください
全体的に
映像が素敵
OPもよい
ストーリーはだいぶ原作と違う、登場人物は共通しているものが多いが置かれた状況などはまったく違う、例としてジュリアナとフランクはビデオ版だと結婚せずに太平洋岸連邦で一緒に住んでいるし、チルダンは特に田上に品物を頼まれていない、イナゴは本でなくフィルム、などなど
どちらかというとサスペンス寄りになったのかな?
よかったところ
↑にも書いたけど映像、実際「ありえない」光景が広がっているところ
日本支配領での日本描写もけっこうよい
ドラマ版オリジナルの登場人物もいるが、その人達が生き生きとしている
チルダンが偽物を日本人夫妻に売るところなど好きだった
あんまりよくなかったところ
登場人物の行動原理がつかみにくい、特にジュリアナお前だ
ジュリアナは主役クラスの人物のうちの一人で、妹からイナゴのフィルムを受け取ったことによって様々なことに巻き込まれていくのだが、しかしフィルムに関わるということはすなわち反体制側につくということで、相当の覚悟と計画が必要なはずなのに、行き当たりばったりに行動しているように見える あと身代金払ってもらったら一言礼ぐらい言ってもいいだろ それにジョーの身代金をフランクの稼いだ金(大金)で払おうとして一旦断られたら怒るってなんでそうなるんだ
あとなんで田上さんはあんなにジュリアナの肩を持つんだ レジスタンスの妹がいて容疑者の恋人がいる人物を政府機関の中に入れたらいけないでしょ実際機密書類盗られてるし
などがありいまいち物語への信頼性が低かったため乗り切れないところがあった
あと、原作のナチスが現実より観念を重視するというところとか、易経プッシュとかがあまり出ていなかったのが残念
総じて
完結ぜんぜんしていないのでシーズン2が出たら見ると思うが、シーズン1で感じたもやもや感が晴れるかなあ、晴れるといいなあ(晴れなさそうだけどなあ)というかんじ
スーパーファミコンの思い出、あるいはあの迷信じみた攻略情報のこと
あのころはインターネットも無かった。頼りになったのは不確かな噂と、本屋で立ち読みした攻略本の断片的な記憶しかなかった。
ロックマンX、スーパーメトロイド、マリオカート、シムシティ。我が家に初めてやってきたゲーム機はスーパーファミコンだった。一日三十分という限られた時間の中、我々兄弟は一丸になってそれらの攻略にいそしんだ。ボスを倒すのに一番いい順番、三角飛びのやり方、キノコを使ったショートカットの仕方、公害を防ぐ建設方法、それらを追求するのに必死になった。三十分なんてあっという間だった。
あの頃の我々を動かしていたのは、先のわからないワクワク感だった。すべてがぼんやりとしていた。あそこに隠しアイテムがあるらしい、こういう裏ワザがあるらしい、その情報には確かなソースはなかった。またあったとして、それを実行した後に何があるのかも知らなかった。
先に何があるのかわからないということが、これらのゲームに対する情熱をより高めていた。物事は謎めいていたほうがいい。本来の魅力に加え、さらに一種宗教的というか、霊的な情熱が加わる。
今、インターネットには攻略情報があふれ、またそれは驚くほどの速さでブラッシュアップされていく。誰かその道に長けた人々の手によって。ありとあらゆるゲームについて。
自分はゲームの面白さの中に、あの小学生のころの情熱を期待している。あの不確かで、粗削りで、迷信じみた情熱を傾けられるゲームを。
五年ぶりに劇場に足を運んだ人間のシン・ゴジラ感想(ネタバレ含)
映画の内容とは関係のない個人的な前置き
・劇場で映画を見ると80パーセント程度の確率で頭痛と吐き気に襲われる体質なので(酔うのかな)、ここ五年は劇場で映画を見ていなかった
・しかしこのごろ見かけるシン・ゴジラの感想が「面白い」しかなかったので気になっていた
・さらにこちらのブログ
で、現在の居住地周辺が出てくるということを知り、俄然見に行きたくなった
・というわけで五年ぶりに劇場へ足を運ぶこととした
大雑把な感想
・すごく面白かった
・あと二三回見てもいい
・見終わった後やはり頭痛と吐き気がしたけどもそれをこらえてでも見たい
良かったところ
・すごくリアリティがあった 災害のときのテレビのL字型画面とかニコニコ動画とかヤフーのリアルタイム検索とか
デスクの省庁わけの印を手書きのペラ紙で作ってるところとか
床に養生シート張られてるところとか
会議の様子とか自衛隊の行動とか実際どうなのかは知らないけども「それっぽい」
「それっぽい」映像って見てて楽しい
・ストーリーがさくさく進む 無駄な停滞が無いのでずっと飽きずに見ていられる 全体としてストレスがなく楽しい映像体験をすることができた
・ゴジラのやばさがやばい
・自分の行動圏がすごくたくさん出ていた 現住所は第一回の上陸でおそらく破壊されていたし実家(神奈川)は第二回の上陸でたぶん通り道になったのでもう帰るところがない
映画の帰り道に泉岳寺駅を使って「あのシーンに出てきたホームだ」となったし、その後もちょいちょい街中で案内地図を見かけるたびに「ここは無事かな」「ここはビーム浴びてた」「ここはホットスポットになってた」と楽しめた
好きなシーン
・最初の海底トンネルの損傷が発生した後、脱出のためスロープを滑ってる人が笑ってたとこ(自分もあの状況だと笑うなと思ったので)
・自衛隊の命令系統(首相→大臣→大臣の右にいた人→現場の偉い人→ヘリ操縦してる人)
・ゴジラ上陸の翌日も普通に学校とか仕事に行っていたところ
・ゴジラに関するデモ
・疎開のシーン
・矢口と赤坂が核を落とす作戦について話すところ
・在来線爆弾
見ていて辛かったシーン
・初めて上陸したときに、マンションの中で小さい子供とお父さんお母さんの家族が逃げ遅れて急いで準備していたけど、ゴジラがマンションを壊したシーン
・タバ作戦で自衛隊の攻撃がことごとく効かないところ
・ヤシオリ作戦で一回目に注入していた人に向かってビームが放たれてしまうところ
疑問だったところ
・タバ作戦とかヤシオリ作戦とか作戦名って何から来ているのか
・米国特使の人のスタイル アメリカのアジア系の人ってもっと焼いてて髪の毛は黒くストレートにしてるイメージ あと発音とかも
・ゴジラに薬剤注入してゴジラが凍結するメカニズムがわからない ゴジラは原子炉を体内に持ってる→放熱が必要 まではわかったんだけどその後が謎
・ゴジラに注入した薬剤はどういうメカニズムで体内をめぐるのか また彼らはそれを理解していたのか
・あの折り紙は折ることによって何がわかったのか
・アメリカの人が言ってた「日本も成長したな」的なセリフ 政治的意図がというか、ああいうことを言うのが「それっぽく」ないなと思って違和感があった
見終わって思ったこと
・3.11は思い返すよなー
・原子炉がやばいってなってたときのもうここに住めなくなるんじゃないか? とか考えたことを思い出した
・シーベルトとか
・たぶんあの世界でもガイガーカウンター売れるんだろうな
・政治的にどうこうというより、あの記憶があってこの映画があって、その上でこの映画を面白く見られたなと
・色々抜きで大変面白うございました
電機店の思い出、あるいは展示品のWindows95PC
今日ヨドバシカメラに出かけた。同行者がレジでの会計を済ませている間、ひまだったのでそこらに展示してあったiPadを触っていた。
iPadにはいくつかアプリがプリインストールされており、その中の一つにアメリカンゲーム風アイコンのものがあった。タップして起動したのは、思った通りゲームだった。一見したところお料理ゲームらしく、スタート画面にはいくつかのキャラ(あまりかわいくない)が並んでおり、彼らに料理を提供するというのがゲームの目的らしかった。一番左のキャラをタップするとゲームが始まった。キャラの前に皿が置いてある。ここにおそらく料理を置くのだろう、ということはわかった。
しかし、そこからの進め方がさっぱりだった。左や右にスワイプすると、食材や調理器具がある。だが、それらをどのように使えば料理が作れるのかがまったくわからない。やみくもに食材をタップしてみると、それらがどんとキャラの皿の上に置かれる。生肉や生魚を置かれたキャラはあからさまに嫌な顔をする。鍋をタップすると、その中には湯がたぎっている。ここへ生肉を入れられれば少なくとも食中毒は起こさずにすむのだろうが、どうやればいいのかわからない。鍋→生肉の順にタップしても、煮えたぎった鍋を確認した後生肉を皿の上に置くという動作が行われるだけだった。そうこうしているうちに同行者の会計が終わり、結局まともなものは提供できずにゲームを終えることとなってしまった。現実世界なら食べログにボロクソ書かれ保健所が入り営業停止処分を受けるであろう。
ただ、あちらこちらをやみくもにタップしながら、私はゲームとは別にある懐かしさを感じていた。この感覚は二十年ほど前にも味わったことがあった。
子供のころ、ときどき親に連れられ電機店へいくことがあった。子供の頃は誰しもそうではないかと思うが、親の買い物というのはまったくつまらないものだ。買うもの――カーテンだの芳香剤だの――は興味を引かないし、長くかかるし、走り回ると怒られる。退屈の極みみたいなものだ。
しかし、電機店では違った。私はあるとき、電機店にずらずらと並べられているものに気づいたのだ。それらは裏にボールのついたマウスと、今よりだいぶ厚いモニター、今よりだいぶ背の高いキーボードが備えられたパソコンだった。OSはWindows95で、壁紙はあのWindowsのロゴか、メーカーの名前の入った模様付きのものだった。少しほうっておくと、3Dの文字が動きながら画面の中を乱舞した。
当時小学生だった私には、パソコンの「ちゃんとした」操作の方法はわかっていなかった。最初はマウスの動きに追随するポインタを見て喜んでいた。次にクリックというものを覚えると、デスクトップにあったいろいろなアイコンをクリックし、アイコンの背景が青くなるのに感心した。ドラッグ&ドロップを覚え、またアイコンの中で一番のお気に入りだった「ゴミ箱」の昨日を覚えると、デスクトップ上のありとあらゆるアイコンをゴミ箱に投入したりした。
そうやってかちかち遊んでいたとき、私はメニューの中に「ゲーム」という文字があることに気がついた。ゲームは大好きだ。私は迷わず「ゲーム」をクリックし、開いたメニューの中から一つをまたクリックした。
小さな画面が現れた。中央には黄色のスマイリーがいる。その下には灰色のマスがいくつもあった。自分の今まで知っていたゲーム――スーパーファミコンのマリオとかカービィとか――とは違うことに戸惑った。あてずっぽうでいくつかマスをクリックしたら、数回目でスマイリーが死んだ。
わけがわからなかった。ルールの説明もなくチュートリアルもなく、いきなり始まりすぐ終わる。私はウィンドウを一度消し、再度その『マインスイーパ』メニューを選んだ。またウィンドウが出る。幸いスマイリーは復活していた。恐る恐るマスをクリックしたら、今度は二度目でスマイリーはお亡くなりになった。
何回かマインスイーパを試し、スマイリーはその度天国へ帰った。私はゲームの他のメニューを試してみた。どれもだめだった。トランプが何列にも重なっているゲームは、一番上のカードがドラッグできるということ以外わからなかった。手札が何枚もあるトランプのゲームは、三人のAIにひたすら負け続けた。というより、どうすれば勝ちなのかが理解できなかった。3Dの飛行機が出てくるゲームは、いくらマウスを動かしても自分の飛行機が動かないままだった。
私はそれからも、電機店にいくたびゲームを試した。岩にガラスを投げ続けるような不毛な試みを何度も何度も繰り返し、その末にようやっと前進することができた。マインスイーパで右クリックすると旗が立てられるということ、ソリティアのカードの並べ方のルール、ハーツのカードの強さ、Hover!ではキーボードを使うということ、それらを私は学んだ。
今では私はこれらのゲームをきっちりクリアすることができる。そして、この経験から得られた教訓などは特に無い。ただ、あの電機店。やけに明るい照明、小学生には少し高かったパソコン台、並べてあった一太郎のソフト、そしてあのWindowsのロゴとスクリーンセーバー。そういうあれやこれやを自分がきっちり覚えていたこと、それを今日iPadを触りながら私は思い出したのだった。
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